漫画「青(オ-ルー)」を読んで、怖いくらいの求心力に引っ張られた。

これは友人からもらった漫画。

ストーリー

仕事、家庭、人生に行き詰まった編集者、安対武。

起死回生をねらう彼は、人気漫画家、差能構造の新連載を取るべく、差能の住む沖縄に向かう。しかし大ヒットというひとつの頂点を極めた差能は、今や漫画を描くことに対する一切の熱を失ってしまっていた。

なんとか差能に漫画を描かせたい安対は、話し合いのために彼を夜の繁華街に連れ出す。しかし、そこでヤクザに絡まれた結果、2人はどうにもならない大きなうねりに巻きこまれ、その渦中で差能は新たなる「熱」を発見する。

その「熱」とは、「人を拳銃で撃つこと」であった…。

夢中になることの意味

人には誰もが、他人にはわからない好みがある。
私もよく「なんでそんなことに夢中になるのか」と言われる。
そして他人に対して「なんでそんなことに夢中になるんだろう」と思うこともある。

そこに明確な理由はない。
その感情は理屈で説明できるものではないし、説明できたところで大した意味を成さない。

しかしその夢中になれるものを見つけることが、生きていく上でとても大事なのだ。
そしてその夢中になれるもの、夢中になることが、その人の個性を形成する上で大切な役割を果たす。

差能構造は売れっ子漫画家だったものの、銃の魅力に取り憑かれて人を撃つことに異常に執着する。
与木区々というヒロインは、視力を奪われることをきっかけに差能構造そして青い神に異常に執着する。

この漫画では、それぞれの登場人物が他人には理解できないような何かに夢中になりながら生きていく姿、そしてそれによってそれぞれが感じる喜怒哀楽が鮮烈に描かれている。

ちなみに、好きなことに異常な執着心を持つ差能や区々が幸福感を感じるシーンはそれなりにあるが、金や世間体などを気にしつつも登場人物の中では所謂常識的感覚をもっている編集者安対が幸福感を感じるシーンが少ないのは皮肉なものである。

はたから見て異常を感じても、当の本人が幸福感を感じていることは多々あるものである。

たくさんの人に読んでもらいたい名作

この作品はアートとしてかなりクオリティが高い。
キャラクターもストーリーも、適当に作られているような、緻密に作られているような。ギャグのような、シリアスなような。意味があるような、ないような。
それでいて心揺さぶられるものがあって、疾走感がある。
特にクライマックスに向けての疾走感はずば抜けている。

あまり評価されてない、というか知られてないっぽいけど、かなり名作。
友人オススメの漫画、ということでもらったんだけど、読んでみてオススメしてくれたことに納得。怖いくらいの求心力を持っている漫画である。
こういう作品はもっといろんな人に読んでもらいたい。

ただし絵が特徴的なので注意。受け付けない人はいると思う。

映画化するなら北野武さんや園子音さんがいい

この漫画が持つ狂気・暴力性・信仰心・エロスを考えると、映画化するなら北野武さんや園子音さんがピッタリだ。

タイトルが私の好きな色「青」だし(読みは「オールー」)、すっかりお気に入りの漫画になった。

ちなみにいつまでかわからないけど、10月29日現在Kindleで1巻無料で読めるので是非。