イライラしながらもどんどん引き込まれた。小説「痴人の愛」を読んだ。

譲治にもナオミにも終始イライラした。でもとてもおもしろかった。

ストーリー

電気技師である主人公河合譲治は、会社で「君子」と呼ばれるほど模範的なサラリーマンで、異性と交際したことがなかった。
経済的に困っておらずルックスも悪くない譲治が結婚しなかったのは、少女を家に引き取って成長を見届けて気に入ったら結婚する、という方法が一番いいと思っていたからである。

そしてあるとき、カフェで美しい容姿のナオミと出会った。ナオミと親しくなった譲治は、この方法で結婚するために、譲治がナオミを経済的に支援しながらまずは友達のようにふたりで暮らすことをナオミに提案。ナオミが承諾し、一緒に暮らし始めることとなった。

一緒に暮らすとはいえ、寝室は別。あくまで友達として暮らし始めた。
譲治はナオミに稽古事をさせて、どこへ出しても恥ずかしくない女性に育てようとした。しかし譲治はナオミにことごとく裏切られていく。だがしかし譲治はナオミの美しい容姿にひれ伏してしまう。

そしてナオミは成長して美しさに磨きがかかり、譲治はどんどん翻弄されていき、やがて譲治の心はナオミに支配されていく。

S女とM男の恋愛の話

ざっくりいうと、S女とM男の恋愛の話。
なので、Sな女性やMな男性が読んだらテンションが上がるかも。
私はMな男性ではないので、そういう意味ではまったくテンションが上がらなかった。

私は乗せない

そもそも私はナオミみたいな女の子がまったく好きではない。むしろ実際にこんな女の子がいたら、かなりイラッとする。
私がナオミと交際したらすぐに別れるだろう。というかそもそもこういう女の子とは交際しないだろう。
だからこそ譲治に対しても、「なんでそこでそんな気持ちになっちゃうんだよ…」とため息混じりにページをめくったところも少なくなかった。

譲治が馬になって背中にナオミを乗せるくだりとか、「なにやっちゃってんだよ…」と思った。
私だったら乗せない。
ナオミには「つまらない男ね」と言われそうだが、つまらなくて結構。
私は乗せない。

これもひとつの愛の形なのかもしれない

小説としてはすごく引き込まれた。特にラストの方の展開はかなり好きだった。

また語弊があってはいけないので一応いっておくが、S女とM男の恋愛の話とはいったけど突出した変態性のある作品ではない(譲治が馬になるところはあるけどね)。
ベースとしてはスタンダードな恋愛ものなんだけど、想いが強くなりすぎてちょっと歪んでしまっている部分がある。そんな程度。
なのでいわゆる恋愛ものの小説である。

読んでいる最中は、イライラしたり眉間にシワを寄せたりため息をついたりしたけど、読み終わったあとは「これもひとつの愛の形なのかもしれないなぁ」と思った。
ふたりが幸せならいいのかもしれない。

全体的に私は譲治に共感するところがあまりなかった。
でもだからこそ、私にはない視点や考え方を知ることができた。
おもしろい小説だった。