不思議と心に引っかかる映画だった。
ストーリー
時代は昭和後期。19歳の主人公・北町貫多は、日雇いの仕事で生計を立てている。
貫多の家庭は、貫多の父親が性犯罪を犯したことで崩壊しており、鬱々とした青春時代を過ごす貫多に将来の希望はなかった。
日雇いで得た収入も酒代と風俗代に消えていき、将来のために貯金することもなく、家賃のための金も使い果たし、家主からは何度も追い立てをくらっている。
そんなある日、日雇いの仕事現場にアルバイトの専門学校生・日下部正二が現れる。人懐っこい笑顔を持つ日下部と貫多は、やがて親しくなり始める。
主人公に愛らしいところを感じたのは2つのシーンだけ
この映画は「友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ」というキャッチコピーだったんだけど、私には主人公の愛すべき部分があまり見つからなかった。
金にだらしなくて、友達との付き合いもヘタで、女性の扱いもヘタで。なんかあると「どうせ俺は中卒だから」と言う。
現実にこの主人公がいたら、「めんどくさいな」と思って私は友達になれないかもしれない。主人公に対しては観てて嫌悪感を感じる部分が多かった。せめて友達との付き合いだけでももうちょっと冷静になれる人ならなーと。
愛らしいところを感じたのは、好きな女の子と友達になるシーンと、ラスト付近の職場仲間の歌が流れるシーン。この2つのシーンが私にとって、主人公についての唯一の救い。その他のところは「うーん…」という感じだった(あくまで主人公に対して思っただけ)
女性目線では違ったように映るのかもしれない
でも女性が観たらどう思うんだろうか。
目を覆いたくなる部分が多いんじゃないかと思ったけど、もしかしたら「どうしようもない人だわ」と思いつつも、意外と女性本能がくすぐられたりするんだろうか。
案外女性の立場から観るとかわいい人に映ったりするのかな。
突き抜けてる映画だった
きれいごとで作られてる部分は一切なく、リアリティはめちゃくちゃあった。エグいくらいに。それをどう感じるかで好き嫌いはハッキリ分かれる。突き抜けてる映画であることは間違いない。多数の賞を受賞している映画なのもわかる。
不思議なことに、主人公に嫌悪感は感じたものの、観終わった今私は「観てよかった」と感じている。
この映画は、希望を見いだせない主人公の鬱屈とした日常に、私が嫌悪感を感じたほどの森山未來くんの迫真の演技と演出が絡み合うことで、いびつな魅力が放たれていた。
一見の価値あり。是非。