観た人それぞれの中で解釈が広がる。映画「汚れた血」を観た。

愛のないSEXをすると感染して死にいたる病気STBOが流行っている近未来のパリ。
主人公アレックスの父ジャンは借金を抱えたまま殺されてしまった。
その借金の返済を求めて、借金取りはジャンの友人マルクに借金返済するよう求める。
マルクは借金返済のため、ある製薬会社が作っているSTBOのワクチンを盗んで売ることを考える。
そこでアレックスに協力を求める。
金に困っていたアレックスはその話に乗り、恋人を捨てて犯罪に手を染めることを決意。
そしてアレックスはマルクの愛人アンナと出会う。
アレックスは次第にアンナに心惹かれるが、アンナはアレックスに、マルクへの愛を語る。
様々な葛藤を経て、アレックスは窃盗の計画を実行に移す。

と。こんな話。

この映画は好き嫌いはっきり分かれると思う。私はおもしろいなと思った。
カラックス監督の映画はポンヌフの恋人もおもしろかったし、結構好きな監督。

まず注意すべきところは、設定が近未来ってところ。30年くらい前の映画なんで近未来っぽく見えないけど、設定は近未来。
愛のないSEXをすると感染する病気が流行する、とかいかにも作り話でしょ。
アンナが裸足で街に出ようとしたところ、物凄く熱がっていて。これは彗星が近づいていて異様に地面が熱くなっちゃってるみたいだし。
なのでSFを観るつもりじゃないと、ぽかーんとしちゃうかも。

あと色彩感覚が独特。全体的には青っぽい映像なんだけど、アクセントとして赤とか黄とか散りばめてたのが印象的。

話としては難しい話じゃないんだけど、会話とか映像とか動きとか、感覚的に楽しむタイプの映画なんで、「なんでそうなるの?」とか考えちゃうとあまり楽しめないと思う。
だからこそ、緻密に作られたストーリーとは違った魅力があって、観た人それぞれの中で違った解釈が広がっていく。

私がもっとも印象に残っているのは、エンディング付近で出てきた一節。

「愛ほど死に似たゲームはなく、愛の無い生など無に等しいから」

観たあと、心の中に深い余韻が残る。
そんな映画だった。